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足と靴の医学 / 整形外科医師 : 町田英一
2014年12月21日更新

強剛母趾( きょうごうぼし )に関する質問集

強剛母趾になると、どうなるのですか?
 強剛母趾では母趾のMTP関節(付け根の関節)が痛くなります。特に足の親指を上に伸ばすと痛みが出ます。の軟骨が損傷されます。軽いうちは、爪先立ちやハイヒールの時に痛みを感じます。中程度になると、母趾を上に向けるのが制限されます。重度になると、この関節はほとんど動かなくなります。

 親指の付け根の関節の部分に上に向かって骨が飛び出しているのが触れます。外反母趾も同時にある事もありますが、別の病気ですから治療は外反母趾とはまったく違います。


赤ちゃんの強剛母指と違うのですか?
 まったく違います。強剛母指(pollex_rigidus)、強直母指は乳幼児、つまり赤ちゃんの親指が曲がったままになって伸びない病気です。手の強剛母指は日本の整形外科医によく知られていますが、足の強剛母趾は足の外科に詳しい一部の整形外科医にだけ知られています。

 なお、同様に大人で手指の腱がひっかかり、伸びなくなるのは、"ばね指"、"弾発指"と呼びます。

強剛母趾のレントゲン写真は?
 立った状態で横からX線写真をとると、母趾のMTP関節(付け根の関節)に骨が持ち上がっています。円の中央部。

反対側(健側)のX線写真です。

強剛母趾の3D (3次元) CT画像は?
3D-CTで見ると、過剰な骨棘 (こつきょく、osteophyte )の状態が良く判ります。左右の母趾を前から見た角度で表示しています。


黄色い部分が過剰な骨棘。手術では、この部分をサージタル・ソーという器具を用いて丁寧に削ります。すると、この部分が反対側の関節とぶつからなくなり、手術中に動くようになります。


同じ患者様の通常の側面X線写真です。


黄色い部分が過剰な骨棘です。


強剛母趾の原因はなんですか?
 原因は不明です。 先天的に骨の形に問題があったり、運動により軟骨に傷がついて、少しづつ骨が盛り上がってきたと考えられます。こうした変化はインピンジメント・エクソストーシス (impingement exostosis)と呼ばれます。 インピンジメントは衝突で、軟骨が機械的に刺激されてエクソストーシス、(外骨腫)、良性の骨腫瘍が発生します。インピンジメント・エクソストーシスは足関節、膝など色々な関節で発生しますが、その一種類であるとする説が有力です。悪性腫瘍に変化する心配はありません。

強剛母趾ではどんな靴を履けば良いのですか?
靴の底の先端が丸く上がってる。トウ・スプリングがある靴と呼びます。そして、母趾が上に曲がりにくい靴を履きます。

私はドイツのフィンナミック (Finnamic : 左写真)を好んでいます。値段がやや高いのですが、アウトソールの交換、インソールの調整などの修理が容易なので、長期間でみると安いと思います。Finnamicはシュリット社、アルカが輸入販売しています。
 さらに、必要に応じて靴の底を硬くして、中敷きは親指が下がるように加工します。母趾が曲がり難いように靴底の先端を改造します。

強剛母趾の手術はどうやるのですか?
 欧米ではカイレクトミー(英、cheilectomy キレクトミー(米)関節唇切除術と関節固定術がゴールデン・スタンダードと言われています。その他に楔状骨切り術や人工関節が一部で行われています。私は主に関節唇切除術を行っています。

関節唇切除術(cheilectomy) 左図
 発見が早く、関節軟骨が残っている場合には、骨の飛び出している部分だけを切り取ります。麻酔は一般的には全身麻酔、腰椎麻酔などを用いますが、私は足関節ブロック麻酔で足首から先の痛みを無くします。外反母趾の手術と同時に行うこともマレにあります。ほとんどの場合、手術前よりも母趾の関節の動きが良くなります。30分間くらいで終わる手術です。

術後はギプスシーネ、(プラスチックのそえ木)を約2週間使います。
ただし、この手術は単純に"骨を削る"というより、関節面のカーブを上手く作る事になりますから、手術する医師の充分な経験が必要です。

痛みが強ければ我慢しながら様子を見るより、早めに行う事をお奨めします。関節の軟骨が削れてしまう前に行えば、その後の関節破壊が防止できます。

 術後はアウトソールに適度なローリングが着いた整形靴をお奨めします。加工など行います。

関節固定術
 関節軟骨が残っていないほど重症例では関節を歩き易い角度に固定します。関節の痛みは確実に取れますが、動きは犠牲になります。術後は洋式の生活に切り替えます。

強剛母趾の手術の麻酔は?
 私の場合は足関節ブロック麻酔で行っています。強剛母趾手術では全身麻酔や腰椎麻酔を使わずに出来ます。痛みは足首への注射する時の痛みがあります。手術当日は夜間、痛みますから飲み薬、座薬、注射等の痛み止めを使います。

強剛母趾の手術で入院期間は?
 強剛母趾手術の入院期間は1から2週間をお勧めします。 当院で行っている足関節ブロック麻酔では術直後から松葉杖をついて片足でトイレのみ使えます。術後2日間、手術部の血液が固まるまで、ベッドから足を下げないようにします。 術後3日から1週間くらいは、病院内は歩けますが、足をベッドから下げると腫れますから、枕等の上に乗せていただきます。 術後2週間で抜糸します。 この頃には、短い距離は歩けます。入院期間は介護をしてくれる家族がいたり、家に車イスが入る場合には短くできます。あまり早く退院すると転倒の危険が有るので2週間の入院をお勧めしています。

強剛母趾の手術の数は?
強剛母趾手術数  高田馬場病院では、2003年から2010年までの8年間で86人の強剛母趾手術を行っています。平均して毎月お一人ずつになります。 実はもっと多くの患者さんが希望されるのですが、私の手術は予約が6ヵ月以上先になり、お待たせして本当に申し訳ないと思っています。

男女比は約1:3で女性に多いです。
人数 ( 男性:女性 )
2003年 5 0 5
2004年 16 2 14
2005年 16 6 10
2006年 4 1 3
2007年 3 2 1
2008年 10 3 7
2009年 16 4 12
2010年 16 5 11
合 計 86 23 63


強剛母趾の程度(グレード)とは? (研究者向け)
研究者により色々です。コフリン(2003)より引用
グレード関節可動域X線写真臨床所見
0背屈 40-60度 and/or 正常側と比べて10-20%減少正常 or わずかの所見自覚症状無し、硬いのみで、他動運動が制限されている。
1背屈 30-40度 and/or 正常側と比べて20-50%減少背側のスパー(骨棘)が主な所見。中足骨骨頭はわずかな関節裂隙の狭小化、わずかな関節周囲の硬化像、わずかな扁平化がある。軽い痛み、または時々硬さを自覚する。 強く背屈したり底屈すると硬さと痛みがある。
2背屈 10-30度 and/or 正常側と比べて50-70%減少背側、外側、時に内側にオステオファイトがあり中足骨骨頭が平坦に見えるが、側面X線で関節裂隙は25%以下にの狭小化は見られない。
軽度から中等度の関節裂隙の狭小化、硬化像。種子骨は通常変化しないが、時に異常も見られる。
中等度の痛み、または硬さを常に自覚する。 完全に強背屈したり底屈する少し前に痛みがある。
3背屈 10度以下 and/or 正常側と比べて75-100%減少し、底屈でも減少している。(多くは底屈10度以下)グレード2に加えて、重度の関節裂隙の狭小化があり、関節周囲の骨嚢腫様変化や側面X線写真で関節背側25%以上が変化し、種子骨は拡大 and / or 嚢腫 and / or 不正像が見られる事がある。ほとんど、常に痛みと強い硬さを自覚し、他動すると可動域全般 (中点は除く) で痛みがある。
4同上同上ほとんど、常に痛みと強い硬さを自覚し、他動すると可動域中点でも激しい痛みがある。

強剛母趾の文献は?
 英語、ドイツ語の足の医学書には必ず載っている疾患ですが、日本語の文献は訳本を除くと、僅かしか有りません。強剛母趾は硬着母趾、強直母趾と呼ばれる事もありますが、整形外科学用語集(日本整形外科学会編、南江堂、第5版、2001年)に従い強剛母趾としました。
  • 天児民和, 整形外科手術書 D)硬着母趾(hallux rigidus)の手術法,pp925-6, 南山堂,東京,1951
  • 田中康仁・他,強剛母趾に対する母趾中足指節関節固定術の経験,別冊整形外科,25,295-298,1994
  • 宗安克仁・他,強剛母趾に対するcheilectomyの経験,臨床整形外科,,30,1223-1227,1995
  • 宗安克仁,野口昌彦・他,強剛母趾に対してcheilectomyを施行した4例,日本足の外科学会誌,17,140-144,1996
  • 町田英一,佐野精司,中本譲,強剛母趾に対する関節唇切除術(cheilectomy),日本足の外科学会誌,17,145-149,1996 図表を除く全文
  • 飛田正敏,高尾昌人,朱尚孝 : 強剛母趾の2例, 中国・四国整形外科学会雑誌, 8(2) : 459, 1996.
  • 飛田正敏, 高尾昌人, 朱 尚孝, 越智光夫: 強剛母趾の2例. 整形外科. 48(13): 1765-1767, 1997
  • 野口昌彦,強剛母趾に対する cheilectomy の成績,整形災害外科,42,1999
  • 小林勇人,竹内良平,平川和男,牧田浩行,斎藤知行,腰野富久:強剛母趾患者の足部X線計測と歩行時足底分布圧.第25回日本足の外科学会,東京,2000, 6. ,会議録
  • 小林勇人,竹内良平,平川和男,牧田浩行,斎藤知行,腰野富久:強剛母趾の母趾可動域制限と足底荷重中心の直線化.京都バイオメカ研究会,京都,2000, 12. ,会議録
  • 町田英一,強剛母趾に対する整形靴,靴の医学,Vol.16,1,S14,会議録,2002,抄録
  • Coughlin MJ, Shurmas PS: Hallux rigidus. Grading and long term results of operative treatment. J.Bone Joint Surg. Am 85(11) : 2072-2088,2003


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