2008年7月17日 更新
第22回 (2008年10月3日-4日)
日本靴医学会学術集会
抄録 特別講演
<< 巻き爪・陥入爪治療のコツ >>
塩之谷整形外科
副院長
塩之谷香
爪一枚の引き起こす痛みは、経験していない者にとって想像を絶するものらしい。痛みは歩行困難をひきおこし、日常生活に及ぼす影響は多大で、学業生活や就労にまで悪影響を及ぼしていることも多い。
巻き爪・陥入爪の治療には種々の手段があるが、1999年に登場したマチワイヤ(以下ワイヤー)により従来とは劇的に変化した。演者は当初より現在まで数千人の患者にワイヤーを用いてきたが、その間に爪郭爪母形成術を行った患者は海外移住のため治療継続不可能であった1例しかない。
演者のところには全国各地よりさまざまな患者が来院するが、いまだに旧態依然とした治療を受けている人が多い。痛むところを切られて、伸びてきたらまた同じ痛みを繰り返している患者。「化膿している」と不必要な消毒、抗生物質の内服や外用を漫然と受け続けている患者。抜爪や形成術後の変形に悩まされ続けている患者のいかに多いことか。
同じような爪の状態に見えても、治りやすい爪・治りにくい爪がある。 爪の厚さ及び硬さ・巻きの程度・炎症性肉芽の有無・疼痛の程度・患者の性格によって、使用するワイヤーの太さ・通す位置・本数・同時に行う処置・治療についての説明を変える必要がある。また、靴の指導も重要である。 これらを知らずに治療にあたれば、「ワイヤー治療をしたけれどうまくいかない」「ワイヤーでは治らない」ので「やはり手術で治すしかない」と考えてしまうかもしれない。言い換えれば、さまざまな手段を用いれば、従来「爪が足趾の先まで伸びていないと」「巻きが強すぎて」「炎症が治まらないと」治療できないと思われていた爪もワイヤーによって治療可能なのである。
「ワイヤーを抜いた後再発するのなら意味がないのでは」「手術をした方が早く治るのでは」などの疑問に答えつつ、残り短いワイヤーをうまく使う方法や爪治療の限界など、演者の8年間の経験から得た「巻き爪・陥入爪治療のコツ」をお伝えする。