dr-machida.com 2005年5月6日更新

以下は2005年6月24、25日(金、土)第30回日本足の外科学会、(医師向け) 埼玉県さいたま市 大宮ソニックシティー
ランチョン・セミナーにて講演しました。
形状記憶合金を用いた爪矯正

町田英一

日本大学整形外科兼任講師
高田馬場病院整形外科
〒171-0033豊島区高田3丁目8の9
Tel. 03-3971-5114  Fax 03-5338-8306

●肉芽を伴う重度の陥入爪でも爪矯正で治せるのか?
●爪矯正で治癒した場合の再発率は?
●爪矯正で改善しているが、いつまで治療を続けるのか?
●厚い爪、薄い爪、爪白癬、爪下外骨腫ではどうするのか?
 既に爪矯正を行った医師から多くの質問を戴き感謝している。

●肉芽を伴う重度の陥入爪
 深爪のために爪の先端が軟部組織内でトゲとして残り、軟部組織に刺さって炎症を生じて肉芽が発生する。軟部組織内の爪の形により、軽度であれば硝酸銀処置とコットン・パッキング、重度であればflexible tube splintingを行っている。Splintingは軟部組織内の爪の縁に点滴チューブを裂いて被せナイロン糸で爪に止める。同時に超弾性ワイヤーを装着して爪の弯曲を矯正する。

●再発?
 爪矯正で爪甲を平らにしても色々な原因で再び巻く。まず、爪の先端が平らになっても更に矯正を続け、近位まで平坦にするように患者様に説明している。深爪、きつい靴、小外傷があれば巻き爪は再発する。また、片麻痺では麻痺側が巻き爪になり、歩かない事も原因になる。陥入爪の再発は爪を伸ばしていれば少ない。つまり、数十年の長期で見れば、巻き爪は自然経過として、ほとんど再発し、一方、陥入爪は巻き爪の軽い時期に爪矯正を再度行えばほとんど再発しない。  再発しても患者様は再度爪矯正を希望する。

●いつまで爪矯正治療を続けるのか?
 歩行能力により治療の要否は異なる。巻き爪は人類の宿命であり、高齢者には多発する。「寝たきり老人」では爪を伸ばしておけば巻き爪があっても治療の必要は無い。一方、テニス、スノー・ボード、スキー、山歩きなど足指に力が入る運動を行う場合には、爪の近位まで平坦にする必要がある。つまり、爪矯正の要否は患者様が一番良く判る。「爪の周りの肉が赤くなったら、早めに爪矯正で治しましょう。」と説明している。

●厚い爪、薄い爪、爪白癬、爪下外骨腫ではどうするのか?
 厚い爪は電動ルーターで削って薄くし、0.55、0.6mmなどの太いワイヤーを用いる。薄い爪は0.35や0.3mmのワイヤーを用い、穴の位置を中央部に寄せて矯正力を弱める。爪白癬は巻き爪で好発するので、爪削り、爪矯正と同時に内服薬などで治療する。爪下外骨腫では爪の先端が持ち上げられるが、爪矯正で改善し、手術を要する例は極めて稀である。

 爪矯正は形状記憶合金による矯正具が開発されてから、急速に広まってきた。多くの先生方の御協力による爪矯正の研究が進んでおり、深謝する。


ホームに戻る