dr-machida.com  2002年5月18日

抄録 1999年6月19日 第24回日本足の外科学会学術集会(東京)にて発表

超弾性ワイヤー(super elastic wire)による陥入爪、弯曲爪の矯正治療

日本大学整形外科
町田英一(まちだ えいいち)、丸山公、佐野精司


【結論】陥入爪12例、弯曲爪40例に対し超弾性ワイヤーによる矯正治療を行い良好な結果を得た。難治な陥入爪でもワイヤーを開始してから平均3.2週間で治癒した。筒状の弯曲爪(Trumpet nail)でも数ヶ月から6カ月(平均4.5カ月)で治癒した。

【目的】難治な陥入爪、弯曲爪を超弾性ワイヤーを主とした保存療法のみで治療し評価する。

【方法】深爪後の陥入爪では形状記憶合金プレートを貼り、爪の近位部を矯正して、先端の角にはcotton packing、硝酸銀処置を行って爪の先端が軟部組織から2mm程度伸びるまで待つ。爪の先端に横に並んだ2つの穴を注射針で開け、爪矯正用の直線超弾性ワイヤー(多摩メディカル社)1本を横方向に底側-背側-底側に逆U字型に刺入する。1から2カ月間後に爪を切る。爪の厚い例では1-2カ月の矯正後に爪が伸びるのを待ち、再度刺入する。

【結果】爪の薄い例では即座に矯正され始めて、痛みが消失する。この治療による重大な合併症は無かった。2例に爪の穴からの横割れが生じたため爪が伸びるまで使用を延期した。、1例が隣接趾への刺激があったためワイヤーの長さを短くした。Trumpet nailでは90度以上に弯曲した爪縁を矯正して起こしてくる時に軽い痛みがあった。

【考察】爪の矯正治療(Orthonyxie)は英国で始まりドイツを中心に広まっている。プラスチックや金属の板バネを接着剤で貼る方法や剛体のワイヤーを爪縁に掛けて引く方法が広く行われているが、装着が煩雑であったり、矯正力が持続できない等の欠点から、重症例に対して充分な効果は得られない。超弾性ワイヤーはニッケル・チタニウム合金であり、弯曲を強くしても一定の弾力が長期間持続する。 深爪の例には形状記憶合金プレートを貼り、爪の先端が軟部組織から出たら超弾性ワイヤーを逆U字型に刺入して用いることで比較的短期間で治療できる。
 
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