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足と靴の医学 / 整形外科医師 : 町田英一
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2021年11月25日更新

外反母趾手術に関する質問集

外反母趾手術に 健康保険は使えますか?
 健康保険が使えます。個室、二人部屋などの病室を希望される場合には差額ベッド代が必要です。

外反母趾手術はどのくらいの人に行われていますか?
 外反母趾手術の数は国により大きく異なります。米国が一番多くて年間2万1千人から2万8千人が外反母趾手術を受けています。日本では人口あたり、その10分の1以下だと推定されます。先進国では普通の手術になっています。

 日本では足の外科を専門とする医師は極めて少ないので、ほとんど行われていません。数人の医師が数多く行っています。

外反母趾手術は入院が必要ですか?
 普通は片足でも入院が必要です。手術の後には腫れますので患肢挙上といって、足を台の上に上げて置いたり、少なくとも下に下げる時間を短くしなければなりません。また痛みが有る場合に痛み止めを使うこともあるので入院が必要です。

 米国では日帰り手術と言って、入院せずに手術する施設もあります。米国では自宅に車椅子が入りますし、入院費が1日で10から15万円と日本よりも高いので、どの手術でも入院期間は短くなっています。その代わりに米国では病院の隣に患者用ホテルがあり、ここから通院します。

外反母趾手術ではどのくらいの期間入院するのですか?
 色々な条件で入院期間が決まります。私は片足の手術で1-4週間位をお勧めしています。ただし、御自宅に車椅子を入るバリアフリー住宅や家族が介護してくれれば入院期間は短く、一人暮らしの人は長くなります。 肥満、高血圧、糖尿病、慢性関節リウマチなどあれば長くなります。

 日本でも手術方法や麻酔など入院期間を短くする工夫が行われています。ただし、人によっては足がかなり腫れますし、松葉杖で歩く時期もありますので、都合が許せば充分に入院したほうが安全です。 一般に男性よりも女性の方が自宅では安静がとりにくいものです。 日本の家庭事情、住宅事情では自宅で安静にしたり、松葉杖で歩く練習をするのは困難だと思います。無理は禁物です。

外反母趾手術をすれば再発しませんか?
 少し再発します。健康な人でも外反母趾が始まると、しだいに進んでゆく病気です。ですから手術後の靴の注意などが大切です。

 ところが、再発より矯正のしすぎです。私の考えでは、絶対に再発しないようにと考えるよりも、外反母趾手術は腹八分目、軽めに行い整形靴で対処した方が良いようです。

外反母趾をすれば普通の靴が履けますか?
 手術前よりは履けますけど........ 普通.....とは難しいところです。手術後でも長く歩くためには整形靴をお勧めします。おしゃれ靴はなるべく短い時間にしましょう。

外反母趾手術は難しいですか?
 非常に難しいと思います。昔から「外反母趾の手術方法は色々ある。つまり、良い手術がないのだ。」と言う人がいます。外反母趾でも、痛みの場所は色々ありますから、一人一人の患者さんに合わせて行います。つまり色々な手術方法から選んで行います。こうした経験に基づく判断が難しいと思います。

 外反母趾に限らず、欧米の専門医は一つの手術を年間に数十から数百例行います。私の留学していたロンドン病院の先生は同じ手術を1週間に10例くらい行っていました。欧米の外反母趾の専門家は1週間に数十例行うのが普通です。

 ところが日本の整形外科医は骨折や変形性関節症の手術に忙し過ぎるせいか、外反母趾の手術はほとんど行われていません。日本では広く浅く技術を磨くので、欧米と比べて専門医は育ち難いのです。ですから、ますます外反母趾の手術は難しいと言われてしまいます。

どの程度だと外反母趾の手術をするのですか?
 不思議に思われますが、外反母趾の形と痛みの程度は関係ありません。つまり、形はほとんど正常なのに趾がビリビリして、痛みが非常に強いことがあります。また、ひどい変形があるのに本人はケロッとして痛くないと言うこともあります。手術の方法は痛みの強い人に対して、その痛みがどこの部分なのかにより異なります。

 運動がしたい、ダンスがしたい..........などなど患者さん本人の希望が第一です。

 整形靴を用いて、中敷き調整、ポイントストレッチ、幅出し、などをすることでほとんどの痛みがとれます。手術は靴では治らない見込みの方だけに行います。一方、母趾が曲がっている所に骨棘という鋭く尖った出っ張りができている場合には、靴では痛みが取れません。

 足の形だけで手術を決めることはできません。

左右両足一度に手術できますか?
 当院では左右両足一度の手術は行っておりません。

 両足行うと2ヵ月くらい歩けませんから筋力が落ち、再び歩く練習に時間が掛かるので、行っていません。若くて体力があり、休みが取れないなどの特別な理由があれば両足同時にいたします。

外反母趾手術は失敗が多いと聞いたことがありますが本当ですか?
 昔はそうでした。20年くらい前には外反母趾は指を真っ直ぐにして、出っぱりを削ればいいと考えられていました。腱を移動して、骨を削るだけの簡単な手術です。そこで、アメリカを中心に多くの手術が行われましたが、結果が良くないので、あまり行われなくなりました。

 その後研究が進んで、腱を引っ張って親指の向きを治すのではなく、骨切り術、つまり骨を切って向きを治して、開張足を治す手術にしてからほとんど成功するようになりました。また、私の場合は外反母趾を少し残すくらいに調整しています。長期的に見るとその方が具合が良いようです。

 外反母趾手術は失敗と言うよりも、患者さんは「完全な足になって、ハイヒールを履いていくらでも歩けるようになりたい。」と期待しますし、医師は「痛みがひどいから少しでも良い状態にしよう。」と考えがちです。手術の後の靴が重要です。

外反母趾手術をすれば完璧に治りますか?
中敷きの取れるサンダルの写真  残念ながら完璧には治せません。つまり、手術は親指の列の骨、つまり第1中足骨の向きを治しますが、足の裏の肉(軟部組織)や親指以外はそのままです。

 外反母趾は重症になると親指の関節の軟骨が完全に磨り減っています。そこで手術により正しい位置に治しても、母趾の付け根の関節の動きが悪くなることがあります。家の中でも靴を履く洋式の生活では問題ないのですが、和式では痛みが出ることがあります。その場合には私のは室内ではオーダーの中敷きの入ったサンダルをお奨めします。外反母趾手術は親指の付け根の骨、つまり第1中足骨の向きを変える事ですから残念ながら足全体の形を元通りにする事は出来ません。手術と靴とは車の両輪のように大切です。

 重度の外反母趾では開張足が強いために、足の裏の肉がぺらぺらに薄くなっており、開張足の手術をしても、はだしでは足の痛みが残る事があります。ですから、足の裏の形にオーダーで合わせた中敷きの入った靴を履く必要があります。

 手術後に整形靴の指導を徹底することで外反母趾手術は初めて成功します。残念ながら日本の整形外科医のなかで、術後の整形靴指導まで行っている先生はわずかしかいません。そのために日本では外反母趾の手術は「うまくゆかない。」と医師も考えて、欧米ほどには行われないのが現状だと思います。

軽い外反母趾ですが、裸足でも痛みます。どんな手術をするのですか?
軽度外反母趾術前写真  外反母趾の形はそれほど変わっていないのですが、痛みの強い例です。まず、靴の中敷き調整や当たる部分のポイント・ストレッチなどで痛みを軽くします。それでも、痛みが激しい場合には手術を行います。母趾の付け根を触ると、皮膚の下に骨が尖って飛び出しています。単に外反するだけならば、触っても丸く触れるのですが、尖って飛び出している場合には強い痛みが有ります。
 この場合には靴では痛みを取ることはできません。比較的小さな手術で対応できます。
軽度外反母趾術後写真  同じ患者さんの手術後半年の写真です。
 この手術は骨をV字型に切るので、(遠位)Chevron法と呼ばれている米国で開発された方法です。
母趾の付け根を3-5cm切り、骨をV字型に切り小指側に5mm位動かします。私は生体内吸収ピンで固定します。そのため金属の内固定具のような抜去手術は必要有りません。手術時間は片足で約30分間です。
入院は片足では1-2週間、両足では1ヵ月くらいお奨めします。ただし、家の中に車椅子が入り、介護の人が付いてくれれば早く退院できますし、一人暮らしならば長めに入院できます。
術後3ヵ月くらいで運動も出来ます。


ひどい外反母趾です。どんな手術をするのですか?
重度外反母趾術前写真  重度の外反母趾です。整形靴を履いても強い痛みがあります。 両足の手術をしました。 親指の付け根よりも、さらに手前の骨、第1中足骨を切って足の幅を治し骨に金属を入れて固定しています。この手術は近位Chevron法と呼ばれている米国で開発された方法です。日本ではほとんど行われていない方法です。手術時間は片足で約1時間です。

重度外反母趾術後6ヵ月写真  術後6ヵ月の写真です。歩いた後にはまだ浮腫が残っています。内固定の金属は手術後3-6ヵ月に局所麻酔をして、抜きました。金属抜去の時には入院は必要ありません。

重度外反母趾術後1年6ヵ月写真  手術後1年6ヵ月の写真です。腫れがとれてスッキリしました。傷跡はよほど注意しないと判りません。温泉などに他人と入っても手術したとは誰も気づかないそうです。長く歩く時には整形靴を履いています。冠婚葬祭では、短時間だけドレッシー・シューズを履いています。術後6ヵ月くらいで運動も出来ます。

外反母趾手術の費用は?
 外反母趾手術の手術料は健康保険で片足 90,600円 両足では x2 です。
患者負担は 3割負担であれば、この3割です。

例えば3割負担の患者様の支払い分の一例です。
手術方法、術後の経過、入院期間は個人差が大きく参考程度としてください。


初診 術前検査 6,900 円
手術前後に 外来5回 レントゲン写真5回 として 950円 x 5 =4,750 円
全身麻酔で 片足手術 大部屋入院2週間 として 手術料 入院費 合計 120,000 円
術後4ヵ月で 外来にて内固定具(スクリュー、ワイヤ)抜去 10,500 円

整形靴を作れば、靴は自費で1-4万円
中敷き(足底挿板) 10,846円 (36,153円を患者様が立て替え払いで後に支払基金から7割返却)

合計 片足で約15万円です。


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